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三味線奏者 平山由香利 さん
塾の教室長として受講生に勉強を教える傍ら、イベントや老人ホームなどでボランティアとして三味線を演奏し、当別町文化祭にも出演する平山由香利さんに話を伺いました。
東京都出身で、小学校入学前に千葉県の祖父母の家に移り住みました。祖父は本業である自転車屋の仕事とは別に、三味線の師範代として自宅の一室で指導していました。そこから聞こえてくる音色と祖父が演奏する姿に憧れ、小学校2年生頃から祖父より熱心な指導を受け始めました。当初は撥で三味線の弦を叩いて音を出すことや、三味線が重く、左手で支えるのに苦労したことを覚えています。
小学生の頃、マーチングバンドの大会に鉄琴担当として出場する予定だった子が急遽出られなくなり、音感があった私がその役に抜擢されました。そのため、2週間で3曲覚えなければならなくなり、三味線ではなく鉄琴の練習ばかりしていると、祖父から文句を言われたことがありました。結果として地方大会を勝ち進み、全国大会に出場することができました。その後は中学生の時に学校祭でバンドを組んだ時に演奏したこともあります。
小学校4年生から6年生までの間、他校の音楽の授業でボランティアとして演奏していました。そこで自分の演奏が平凡だと見られるのが嫌だったのと、人前で演奏して褒められたかったので、空いている時間は練習に打ち込んでいました。
中学に入ると練習量に比例して演奏も上達し、祖父が体調不良や旅行などで不在時に、代役として教えられたらと思っていました。三味線の大会には中高ともに部活の関係で出場できませんでしたが、中学校3年生の学校祭で後輩と2人で演奏したのは良い経験だったと思います。
大学に入って一人暮らしを始めると、実家に帰ったとき以外は三味線を弾いていませんでした。就職して釧路に3年間住んでいた時も同じでしたが、祖父が亡くなったことをきっかけに三味線を譲り受けました。今考えると、サブスクリプションで借りることができた可能性があったので、もっと探せばよかったと思います。その後、練習を再開し、転勤先の当別町で文化祭などのイベントや老人ホームでボランティアとして演奏するようになりました。親の仕事の影響で、小さい頃から様々な方と交流する機会があったので、ステージでは緊張せずに演奏ができます。
文化祭での様子
きちんと弦を叩けば音が出るという意味では扱いやすい楽器だと思うのと、音色や癖は楽器ごとに異なり、その微妙な違いや細部の調整などを自分で感じ取りながら演奏できるのが魅力だと思います。また、同じ曲を複数人で演奏すると、メロディーラインは同じでも、響き方や表現の仕方は奏者によって違います。さらに、歌手ごとの得意な音程に合わせて演奏できることも、三味線の魅力の一つです。
三味線自体も3種類あって、得意分野が違うのも面白いです。細い竿で細竿というものは長さが短かく軽いので小さな子でも扱いやすいのと、芸子さんなどがお座敷遊びで使うような三味線なので音がこじんまりしてるという言い方をするとあんまり聞こえはよくないですが、狭い場所の方が聞きやすいです。また、長唄も細竿は向いていると思います。
中竿が、猫の皮を使っているイメージがあると思います。民謡にすごく向いてる三味線になるので、歌い手さんの唄をつけたりするのはこれだと思います。盆踊りの演奏は中竿で弾くことが多いです。
現在私が使ってるのが太竿で、いわゆる津軽三味線です。犬の皮を使っています。皮が一番硬くてよく響き、近くで演奏を聴いている人には耳が痛いと言われることもあります。津軽民謡やじょんから節などの迫力がある曲で使います。吉田兄弟が有名だと思いますが、教科書に掲載されていたのには感動しました。祖父が吉田兄弟の弟さんの結婚式に行ってるので、私が遠い遠い兄弟弟子で、祖父が完全に兄弟弟子です。そんな吉田兄弟の曲のように、即興曲と言われるような、いわゆる歌をつけない曲に一番向いてるのは津軽三味線だと思うので、楽器そのものの違いや、種類で違いがあるのも面白いです。
地元で複数人で弾いてるときは師匠がいる状態だったので、自分がミスをしても音をかき消してくれる人がいるのは大きかったです。また、大きい演奏会でも自分より上手な人がいるので、安心感があります。ただ、間違えると後々言わるので、そういう意味では緊張感があります。一方、個人での演奏は、間違えると自分はわかるのですごい嫌です。ミスタッチをすると、ダイレクトに影響が出るので叩けてなかったとか、変に引っ掛けてしまったとかになると、その音を消しようがないので一人で弾くのは難しいと思います。
長い間、三味線を演奏してきたので、その技術を活かし、多くの人に楽しんでもらいたいと思っています。ただ、上手く演奏できなければ次に呼んでもらえない可能性もあるので、プレッシャーを感じながら演奏しています。
受講生によく伝えていることは、「勉強はとても大切だけれど、部活動や他の習い事を続けることも結果につながるという意味で大切だ」という考え方です。自身の活動を通じて何かを伝えられれば嬉しいと思っているので、この活動を続けていくことも一つの目標としています。
11月2日(土)の13時15分から演奏します。ぜひお越しください。