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令和5年第1回当別町議会定例会において、令和5年度の町政執行方針が町長から表明されましたのでお知らせします。
令和5年 第1回当別町議会定例会開会にあたり、新年度の「町政執行方針」を申し上げます。
私が町長に就任してから、1年と7ヶ月が経過いたしました。
これまでの間、就任時に掲げた「デジタル田園都市」の実現に向け、高齢者への「デジタルデバイド対策」や小中学生への「プログラミング教室」の開催、「LINE」を活用した町の情報発信のほか、商工業者への「キャッシュレス決済」や認定こども園への「れんらくアプリ」の導入支援など、必要とされる施策の種まきを進めてまいりました。
新年度以降、この歩みをさらに加速させるべく、「当別町まち・ひと・しごと創生総合戦略(第2期)」の改訂作業を進め、新たな戦略プランとして『デジタル基盤の構築~デジタル田園都市「Tobetsu“DIGI”town」の創造~』を掲げたところです。
後ほど、改めてご説明いたしますが、この新しい戦略プランは、デジタル技術の導入によって、日常生活のあらゆる場面をデジタルが支え、誰もが安心して住み続けられる、データ駆動型社会の形成と「Society 5.0」の実現を通じ、わがまちが抱える少子高齢化による人口減少を克服し、次代に引き継ぐための礎となるものです。
また、「デジタル化の推進」と同様、重要な戦略の一つである「カーボンニュートラル」への取り組みでは、これまでに公共交通における「BDFの活用」や森林資源を活かした公共施設への「木質バイオマス燃料の導入」、各町内会への「街路灯LED化の支援」などを実施してまいりました。
このような取り組みを土台としながら、2050年までの脱炭素社会を目指すべく、令和3年4月に「ゼロカーボンシティ」の宣言を行い、令和4年度には、新しいまちの顔となるロイズタウン駅において、地中熱を活用した「ロードヒーティング設備」を導入したところです。
併せて、今後の目標達成に向けた、具体的なロードマップとなる「当別町ゼロカーボン推進計画」の策定にも取り組んでおり、町民や事業者の皆様のご協力のもと、「サスティナブル(持続可能)」な社会の実現を目指してまいります。
さて、「町の人口」に話題を移しますと、人口全体としては減少傾向にあるものの、総務省統計に基づく昨年の「社会人口」は69人の増加となり、特に「0歳~14歳が+68人」「25歳~49歳が+79人」と、子育て世帯が増加し、これまでの取り組みの成果があらわれております。
その一方、本町のまちづくりの重要なファクターである「雪対策」では、今シーズンも災害級の暴風雪が発生し、国道275号および国道337号に加え、主要道道81号も通行止めとなり、さらにはJRも運休となるなど、町民の皆様には、大変なご心配とご不便をおかけいたしました。
翌日には道路も開通し、公共交通も復旧しましたが、毎年のように発生するこのような災害に、迅速に対応できる「災害に強いまちづくり」の実現に向け、関係機関との連携強化や、さらなる除排雪サービスの充実など、各種対策の検討を進めてまいります。
もうひとつ、重要なファクターとして「新型コロナウイルス感染症対策」があります。
コロナ禍の3年間、人の移動や行動が抑制されてきましたが、この5月には、感染症法における「5類」への引き下げ措置にともない、ワクチンや医療機関での扱いなど、様々な変更が想定されます。
また、人の移動も活発化することが考えられますので、今後の「ウィズ/アフター・コロナ」時代を安心して生活できるよう、「マスクの有無」を含めた感染症対策等について、引き続き、国・道の方針や社会動向などの情報収集を行い、迅速に町民の皆様に情報をお伝えしつつ、社会経済活動の再開を図っていく考えです。
以上、これまでの取り組みと、新年度に向けた考えの一端を申し述べました。 これより、新年度における各分野の具体的な施策の展開について、総合戦略の各戦略プランに沿って、ご説明いたします。
初めに『産業力の強化~しごとの創生~』に係る施策の展開についてです。
まず、「企業誘致推進プロジェクト」および「商工業活性化プロジェクト」ですが、これまでの企業誘致活動が実を結び、大手ドラッグストアの西当別地区における開業の協議が整いつつあります。これにより、よりよい住環境の構築と、さらなる定住の促進が期待されます。
また、この企業の進出効果を町内の経済活性化にも繋げるため、本企業が持つ、デジタル技術を活用した「ポイントカードシステム」の導入について、商工会や関連事業者と検討いたします。
このような取り組みに加え、ウィズ/アフター・コロナにおける経済成長には、商店街の活性化および6次産業化の拡大が、重要なカギであると捉えておりますので、関連事業者と連携しながら、これら取り組みも進めてまいります。
次に「農業10年ビジョン推進プロジェクト」ですが、「水田活用の直接支払交付金」の見直しにより、本町の農業は大きな転換期を迎えており、現在、農業者や関係団体の皆様の英知を結集して、農業の将来像や経済成長への道筋を示す「農業10年ビジョン」の見直しを進めております。
また、新年度においては「地域おこし協力隊」をさらに増員し、担い手対策を拡充するほか、「花き」のスマート農業実証事業を継続し、施設園芸分野におけるスマート農業の研究をさらに深めてまいります。
このほか、国の「みどりの食料システム戦略」の推進策として、有機農業などによる環境負荷の軽減や、付加価値の高い農産物を生産する農業者への新たな支援も実施いたします。
次に「再生可能エネルギー利用プロジェクト」および「林業振興によるエネルギーの地域循環プロジェクト」ですが、ウクライナ危機に端を発する原油価格や資材価格の高騰などが、本町の経済に大きな影響を及ぼしている状況からも、化石燃料からの脱却と地域エネルギーへの転換を、着実に進めていかなければなりません。
これらの流れを加速させるため、環境省の「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金 重点対策加速化事業」にチャレンジし、町民や町内事業所における太陽光発電などの再生可能エネルギー設備の導入支援を実施する考えです。
併せて、「カーボンニュートラル」の根幹となる林業振興では、北海道との連携による林業専用道の開設に向けた準備を行い、さらなる森林整備を進めてまいります。
なお、これら「ゼロカーボン」への推進に際し、必要となる支援やサポートを積極的に行っていく考えですが、ゼロカーボンの実現には、行政だけではなく、全町民・全事業者の皆様の理解、ご協力が必要不可欠となります。
改めて、町民の皆様、事業者の皆様のご理解、ご協力をお願い申し上げます。
次に「道の駅プロジェクト」ですが、先般、道の駅内に24時間営業の「セブンーイレブン」が開業し、運営事業者である株式会社tobeは、新たな顧客の獲得に向けて歩み始めました。
その第一歩として、株式会社セブンーイレブン・ジャパンと連携し、当別町産の「黒豆」や「きな粉」を活用した商品開発が行われ、新店舗オープンに併せ、札幌近郊の123店舗での販売が実現し、当別町産品を活用した商品を、広めていくことができました。
新年度においても、株式会社tobeによる新商品開発・6次産業化に向け、必要な支援を講じてまいります。
次に『人を呼び込むまちの再生~魅力の創生~』に係る施策の展開についてです。
まず、「新しいまちの顔づくりプロジェクト」ですが、昨年プレオープンした見学体験施設「ロイズカカオ&チョコレートタウン」や道の駅などを中心とした「ロイズタウン駅周辺エリア」に、町内外の注目をいかに多く集めるかが重要と考えており、新年度は、このエリアで「自動運転バスの実証運行」を核とした「賑わい創出事業」に取り組み、これを契機に、まちのPRおよび周遊観光促進による交流人口の増加と、企業誘致の推進に繋げていきたいと考えております。
次に「駅周辺再開発プロジェクト」ですが、現在、役場庁舎建て替えの検討など、当別駅を中心に、利便性を高め、持続可能なまちづくりを実現するため、「立地適正化計画」に基づくコンパクトなまちづくりに取り組んでおります。
係る都市機能の誘導として、「第2期町営住宅等長寿命化計画」に基づき、末広団地7戸の移転補償および東町団地の一部の解体実施設計を進めるほか、新たに建設予定の民間ビル内に公共的施設を設置するなど、「駅周辺整備事業」に厚みを持たせることで、本町地区における賑わい創出や新たな人の流れを構築したいと考えており、新年度については、図書館の施設配置等、事業化に向けた検討を行います。
次に「移住促進プロジェクト」ですが、「新築住宅購入支援金」をはじめとする施策が実を結び、子育て世帯を中心とした町内移住が進むなど、社会人口が2年連続で増加となりました。
現在も住宅建築戸数は増え続けていることから、住宅地造成による分譲地の促進を図るため、民間ディベロッパーによる宅地造成の後押しとなる支援制度の議論を深めるなど、定住人口の増加に繋げてまいります。
次に『未来を担う子どもの育成~ひとの創生~』に係る施策の展開についてです。
まず、「小中一貫教育推進プロジェクト」ですが、本町が目指す一貫教育は、学力向上を最大の目的としており、新年度は、ICTを活用した質の高い教育をさらに進め、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図ります。
併せて、小中学生を対象とした、民間ノウハウを活用したプログラミング教室の開催にも取り組みます。
また、新年度には「とうべつ学園グラウンド整備」のほか「西当別中学校屋内体育館外壁改修工事」を実施するなど、学校環境の改善も進めてまいります。
次に「子育て世帯応援プロジェクト」ですが、移住促進施策の効果により増えている子育て世帯の幼児教育・保育ニーズに応えるため、認定こども園「おとぎのくに」の園舎建て替えと併せ、保育士の配置をさらに増加させるための支援を行い、入園を希望する子どもの受け入れに対応できる体制を整え、質の高い保育の提供に取り組みます。
次に『住み続けたいまちの形成~まちの創生~』に係る施策の展開についてです。
まず、「災害に強いまちづくりプロジェクト」ですが、新庁舎建設については、現在、「新庁舎建設検討委員会」にて活発なご議論をいただいているところです。
この「新庁舎」は、まちの賑わい創出に繋げることのほか、将来的な社会情勢の変化に対応した施設としての役割が求められております。
また、事業費の算出にあたっては、昨今の資材高騰による費用の増加も考慮するなど、事業規模の設定については慎重に進めなければなりません。
これらを踏まえ、今後は、既存の公共施設の利活用や民間企業との連携、また、デジタル化の推進などの新たなアプローチによるサービスの向上を図りつつ、事業費とのバランスが取れた適切な規模となる「スマート庁舎化」をベースに、議論を進めてまいります。
次に雪対策ですが、除排雪の課題克服に向けた現時点での基本的な考え方は、「町特有の地勢・規模であるからこそ、可能な策を検討し実施すること」「これまでの知見は踏まえつつも、前例や常識に捉われない大胆な対策を検討し実施すること」を主軸としており、新たな除排雪の在り方である「当別モデル」を構築し、これまで以上に、冬季間における町民の皆様の生活環境改善に努めているところであり、その第一歩として、令和4年度には住宅地に隣接する「太美雪堆積場」を新たに開設し、除排雪作業の効率化を図る取り組みを行いました。
また、災害規模の降雪の際には、受託事業者である環境整備協同組合はもとより、建設協会や個人事業者の協力のもと「オール当別」で対応する体制を構築するとともに、夜間排雪などの排雪時間の延長も実施いたします。
これらと併せ、北海道開発局や北海道警察等の関係機関と連携を図り、必要に応じて災害対策本部を設置するなど、冬季も安心して暮らせる体制を整えてまいります。
次に「地域・在宅医療確保対策プロジェクト」ですが、町内の医療体制確保を最重要課題と捉え、「医療機関誘致条例」を制定するなど、医療施設の誘致に取り組んだ結果、新たに消化器内科と耳鼻咽喉科の誘致に繋げることができました。新年度は、訪問診療に強みを持つ医療施設の誘致も予定しております。
次に、「地域福祉推進プロジェクト」および「北海道医療大学連携プロジェクト」ですが、医療系総合大学である「北海道医療大学」には、これまで、医療・介護・社会教育など様々な分野で、本町の地域福祉を支えていただいております。
特に、北海道医療大学、地域包括支援センター、町の三者が協働で実施している「フレイル予防教室」については、健康寿命の延伸に繋がるものであり、今後、西当別地区への拡大を図りつつ、高齢者の健康・生活支援にも取り組み、「人生100年時代を支えるまち」の実現を目指してまいります。
最後に、新設した『デジタル基盤の構築~デジタル田園都市「Tobetsu“DIGI”town」の創造~』に係る施策の展開ですが、新年度に取り組む5つの主要事業について、それぞれご説明いたします。
1つ目は、「各種証明書のコンビニ交付事業」です。
住民サービスの利便性向上を図るべく、マイナンバーカードを活用し、札幌市などでも住民票や印鑑登録証明書の交付が受けられる「コンビニ交付サービス」のシステムを構築し運用いたします。
これと併せて、デジタル機器の取り扱いやデジタルを活用したサービスの利用が苦手な方などに対し、段階的に慣れる機会を提供することが重要ですので、引き続き「デジタルデバイド対策」と、デジタル化の基盤となるマイナンバーカードの普及促進を図る「交付申請サポート」を実施いたします。
2つ目は、「リモート相談窓口整備事業」です。
デジタル田園都市の構築に向け、役場窓口の利便性を高めるべく、より身近な場所で行政手続きに関する質問・相談などが出来るよう、各拠点をデジタルで結ぶ「リモート相談窓口」を整備いたします。
それぞれの窓口を結ぶ端末を、役場本庁舎、ゆとろ、太美出張所のほか、札幌市中心部への設置も検討しており、役場窓口の新たなスタイルを目指してまいります。
また、行政DXでは、現在、「RPA」を導入し検証を進めておりますが、その効果が十分に期待出来ることから、業務での活用をより深化させていくとともに、会議などにおけるペーパーレス化や、リモート接続環境による場所に制約されない、柔軟で多様な働き方を推進いたします。
さらには、デジタルの力を活用した「書かない窓口」についても、手続きや待ち時間の短縮、記入漏れの防止など様々な効果が見込まれることから、導入に向けた研究を進めてまいります。
3つ目は、「気象観測システム導入事業」です。
本町には、気象庁によるアメダス観測所が設置されていませんが、今後のデータ駆動型社会に必要不可欠との考えのもと、新たに気象観測器を設置し、気象情報データの収集、蓄積を行うとともに、町の事業への活用をはじめ、町民や事業者の皆様へ情報提供を行うなど、除排雪・道路・河川・上下水道・農業・災害対策等、様々な分野での利活用を図ります。
この気象観測器は、ライブカメラとともに本町地区・西当別地区へ1ヵ所ずつ設置し、気温・雨量・風向風速・降雪量・積雪深の観測を行い、収集したデータは、ライブ映像と併せ、リアルタイムで公開いたします。
また、各種観測値が一定値を超えた場合には、町ホームページやSNSを活用して警戒を呼び掛けるなどの情報発信も行います。
4つ目は、「デジタル教育推進事業」です。
個別課題を把握し、個別最適な学びを実現するため、各学校における「AIドリルの導入」をはじめ、授業におけるICT活用を最大限高めるための「ICT支援員の派遣」、新たな社会に適応できる人材の育成に向けたプログラミング技術等を習得する「プログラミング教室の実施」、最新技術・情報モラル教育を含めた講演会の実施による「デジタルリテラシーの習得促進」などの教育事業について取り組みます。
なお、これら4つの事業については、国の「デジタル田園都市国家構想交付金」を活用すべく、すでにエントリーを行っております。
最後に、「自動運転バスの実証運行事業」です。
「新しいまちの顔づくりプロジェクト」でも申し上げたとおり、新技術の実証としての先進的な取り組みや、連動したイベントの開催などを町内外に発信し、誘客効果や町のPRに繋げ、ロイズタウン駅周辺の賑わい創出や活性化など様々な波及効果を生み出すべく、その取り組みを進めてまいります。
以上、新年度に取り組む施策の概要について、それぞれご説明いたしました。
繰り返しとなりますが、令和4年度は、「とうべつ学園」の開校や「新築住宅購入支援金」をはじめとする移住施策によって、子育て世帯を中心とした「転入超過」となりました。
このことは、自主財源である町税収入にプラスの効果を生み出しており、新築住宅だけをみても、500万円以上の増税効果が見込まれるところです。
私は、町長就任直後から、町民の皆様や職員と一体となって「人口減少を止めたい」と何度も申しておりましたが、これから当別町が「定住人口増加の町」へと向かうためには、少子化対策に注力する必要があると考えております。
国も、4月に「こども家庭庁」を発足させ、また秋までには政府全体のこども施策の基本方針となる「こども大綱」が閣議決定される見込みであり、本町としても、町の特性を踏まえ、少子化対策の中でも特に効果が見込まれる分野・真に必要な対策に狙いを定めた検討を進めてまいります。
このほか、関係人口増加への取り組みも、町の魅力や知名度の向上のみならず、定住人口増加へと繋がるものと考えております。
その取り組みの一つとして、「ふるさと納税」があげられ、その寄附件数は、令和3年度実績で、約22万件となっております。
この22万件の寄附者、いわゆる「当別町応援サポーター」との関係をより深化させ、「関係人口」へとステップアップさせる取り組みも重要です。
また、現在、農業分野で「地域おこし協力隊」の皆様に活躍いただいておりますが、この募集範囲を様々な分野に広げ、関係人口・定住人口の増加に繋げる施策の研究も進めてまいります。
これらと併せ、「デジタル田園都市」による持続可能なまちづくりの実現をより加速化させたいと考えており、行政のDX化はもとより、「地域のDX化」による課題解決の工夫と、それを実現させる「DX協議会」の組成なども、検討いたします。
いずれにいたしましても、「人生100年時代」に突入している現代、経済的要因のみでは幸福度を満たすことはできず、若者から高齢者まで、この町で有意義に、健やかに、そして安心して暮らすことができるよう、ひとり一人が心身と社会的に「幸福感・満足感」が得られる、すなわち、「well-being(ウェルビーイング)」なまちの在り方を模索し、その具現化に向け、それぞれの年代に即した「デジタル技術を活用した施策の展開」を図りたいと、考えております。
最後になりますが、新年度につきましても、町職員とともに正面から課題に向き合い、全力で町政執行に取り組むことをお約束するとともに、議会議員の皆様方には、今後とも各施策へのご協力を賜りますよう切にお願い申し上げ、令和5年度の町政執行方針といたします。